クンシランの生態
原産地と生態
クンシランの原産地は南アフリカに位置するナタール、トランスバールです。気候としては温帯に属します。暑さ寒さには割と強い植物ですが、真夏と真冬は成長が鈍ります。
岩陰や森の中の木の根元など、強い日差しの当たらない場所に生育しているため、春から秋にかけての強い日差しでは葉焼けを起こしやすいです。
増え方は種によるものの他、株の成長とともに子株を出し数を増やします。
生育サイクル
- 春 成長、開花、結実
- 夏 花芽形成、成長
- 秋 成長、種の成熟
- 冬 ほぼ休眠
春に花を咲かせ、暖かい季節に成長、冬季は休眠します。
クンシランの基礎知識
基本情報
科:ヒガンバナ科(Amaryllideceae) 属:クンシラン属(Clivia)
属名のCliviaは、19世紀にクンシランを贈られたイギリスの クライブ家(Clive)出身の 公爵夫人名前にちなんでいます。
名前にランが入っており形状もラン科の植物によく似ているのでランの仲間かと思われがちですが、ヒガンバナ科に属します。同じ科に属する植物としてアガパンサスやアマリリスがありますが、クンシランは球根性ではありません。
別名:ウケザキクンシラン、クリビア
現在多く出回るクンシランは、「Clivia miniata」およびそれをもとに品種改良されたもので、かつて「ウケザキクンシラン」と呼ばれていました。
元々クンシランは「Clivia nobilis」のことを指していましたが、「Clivia miniata」およびその改良品種が多く出回ったため、こちらがクンシランと呼ばれるようになりました。
英語ではCliviaやKaffir lilyと呼ばれます。
Kaffirとはアフリカの黒人をさす言葉で、クンシランが南アフリカ原産であることに由来するようです。
分類:多年草/常緑性
春先に花の咲く常緑性の植物で、一年中つやと厚みのある美しい葉を楽しめます。
花だけでなく葉の観賞価値も高く、葉の形状が細いもの、太いもの、斑の入ったものなど様々に品種改良がおこなわれています。
花色:オレンジ、黄、緑、またはそれらの混合
原種のClivia Miniataの花色はオレンジなのでオレンジ色のものが多いですが、品種改良により黄色や緑色の花も出回るようになってきました。
交配の仕方によっては花びらに黄色とオレンジ色が同時に出たりもします。
歴史
昭和5年発行の「萬花図鑑」によると、ヨーロッパへクンシランが紹介されたのは1828年、日本へ渡来したのは明治5年とのことです。
当初は「Clivia nobilis」が渡来し、nobilisが「高貴」を意味することから「君子蘭」と名付けられました。
現在クンシランとして流通する「Clivia miniata」およびその改良品種は明治末期に渡来し、当初は「ハナラン」という名称で呼ばれていましたが、現在ではこちらがクンシランとして流通しています。(参考文献:よくわかる栽培12か月 クンシラン)
クンシランの原種
現在6種あるとされています。
下の写真は管理人宅近所に咲いていたクンシラン。クリビア ミニアータに近い種です。
当初は「ウケザキクンシラン」の名称で呼ばれ、現在出回っているクンシランの品種改良元となった品種です。
葉は細く上向きに生え、花は上向きに咲きます。「miniata」は「赤い」の意味。
当初、「クンシラン」として日本に入ってきた品種です。筒形の花が下向きに垂れ下がるように房になって咲きます。花の先端は緑色をしています。
「nobilis」は「高貴」の意味。
花は下向きに咲き、先端は緑色。株が茎立ちし、ヤシの木のような形状に育っていく少々異色の品種です。
「caulescens」は「有茎の」の意味。
花の色は控えめなオレンジ色で、しべが花弁の外まで伸びています。他の品種と異なり花期が秋から冬となっています。
「gardenii」 はおそらくアメリカの博物学者「
湿った土質の場所に自生します。草姿や花はガーデニーに似ます。
「robusta 」は「強健な」という意味。
茎から長めの柄が出て、花がつり下がるように咲く。
「mirabillis」は「オシロイバナ属」の意味がありますがそれが由来でしょうかね?
花の付け根部分がが細長いオシロイバナに似ているといえば似ていますが。
園芸品種
日本に出回っているクンシランはほとんどミニアータ種を元に品種改良されたものです。
草丈、葉の太さ、斑の有無など様々に改良されています。
写真は管理人宅のクンシラン。葉が広いダルマ系で、斑が入っているタイプです。
以下に一部品種の名前を記載します。
- 四国達磨
- 非常にコンパクトで太い美しい葉を持つ。葉が太くずんぐりしたものにはダルマと名がつくことが多い。
- 喜望覆輪
- 葉の両側に斑が入るコンパクトな品種。このような模様を覆輪と呼ぶ。
- 輪波の花
- 太い斑が横方向に幾筋も入る。横方向の太い斑を虎斑という。
クンシランの育て方
霜に当たると葉が枯れるので真冬は取り込んだほうが無難。
但し、10℃以下の低温に60日ほど当たらないと花が咲かないので注意。
日光で葉焼けしやすいので注意。
日当たり | 日当たりを好む。 |
用土 | 普通の培養土。 |
水やり | 鉢の表面が乾いたら。 |
温度 | 5℃以上必要。但し、花芽の休眠打破には10℃以下の低温が必要。 |
肥料 | 真夏と真冬以外に緩効性の置き肥か液肥。 |
病害虫 | 白絹病、軟腐病、ナメクジ |
増やし方 | 種まき、株分け |
花期 | 2~4月 |
栽培環境
原生地では森の木の根元などに生えている植物なので日光にあまり強くありません。
特に真夏の直射日光に当たると葉焼けを起こしやすいので、日差しの強い季節は遮光をするか明るい日陰に置く必要があります。
また、霜に当たると葉が枯れるため鉢植えにして真冬は屋内に取り込むのが無難ですが、霜が避けられる場所では地植えすることも可能なようです。
ただ、庭植えした場合は風や葉が傷みやすくなります。
肥料
クンシランは肥料を好む植物です。生育が鈍る真夏と寒さの厳しい12,1月を避けて与えます。
緩効性の化成肥料、油粕と骨粉入りの固形肥料を月1回程度施し、液肥も2週間に一度ほど併用して与えます。
肥料を与えすぎると葉の生育に影響が出るので、規定量を守ります。
病気と害虫
白絹病、軟腐病:高温と蒸れによって起こり、株が腐ったようになります。発生してしまった場合は腐敗が起こった部分を切り離し、殺菌剤を散布します。水やりは成長点にかからないように根元に行いましょう。
すす病:カイガラムシの排せつ物にすす病菌が発生して葉の表面が黒く汚れます。対処方法はないのでとりあえず拭き取っておきましょう。
ナメクジ:捕殺します。
カイガラムシ:5月頃より暖かくなってくると発生する。分泌物によりすす病を併発することがあるので見つけ次第捕殺する。
用土(鉢植え)
赤玉土、腐葉土、バーミキュライトの配合土に元肥を配合。
または、市販のクンシランの土が手軽。
植えつけ、 植え替え
花後の4月から5月頃行います。植え替え前に1週間ほど水を切り、鉢から抜き、黒く傷んだ根を取り除きます。
この時、白い根がしっかりと張っていれば根鉢を崩さないように二回りほど大きな鉢に植え替えます。
ふやし方
種まき:自家受粉しにくいため他の株と受粉させます。花後から子房がふくらみ、11月頃に赤くなります。その後、3月頃種を収穫します。上の写真は受粉後数週間の4月末頃の子房。
収穫した種は3月下旬から4月に水で洗い表面のぬめりを取り、赤玉土とバーミキュライトの配合土に表面が出るくらいに浅く植え付け、水をやり明るい日陰で管理します。
株分け:花後の4月から5月に行います。株分け前、1週間ほど水を切り、鉢から抜いて根をほぐし、子株にも根が付くようにはさみで切り分けます。
子株が小さいうちに分けてしまうと生育に良くないので、親株と同じくらいの大きさになったころに植え替えるのが安心です。
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